東京・練馬(平和台)でひときわ存在感を放つタイ料理店「バンハオ」。この街で10年以上愛され続けるお店の裏側には、オーナー・ノンさんとその家族の挑戦と想いが詰まっています。タイ料理を通じて地域に根付き、多くのファンを魅了してきたバンハオ。
しかし、その成長は決して平坦な道のりではありませんでした。今回は、ノンさんのこれまでのストーリー、ビジョン、そして今後の展望についてじっくりお話を伺いしました。
「バンハオ誕生のきっかけ」—夢だったタイ料理店への第一歩

ケージー:本日はインタビューのお時間をいただきありがとうございます!
ノンさん:こちらこそ、ありがとうございます。今日はよろしくお願いします。
ケージー:こちらこそです!今日はノンさんのこれまでと、バンハオさん誕生の背景についてお話を伺えるのを楽しみにしてきました。では早速ですが、バンハオさんはいつ、どのように始まったお店なんでしょうか?
ノンさん:バンハオは2011年にオープンしました。当時、夫がレザーブランドの事業を春日町で経営していて、その10周年記念に「ずっと夢だったタイ料理屋をやろう!」という話になったんです!
ケージー:なるほど!別事業をやりながら、夢だったお店をスタートされたんですね。
ノンさん:はい。当時は今ほどタイ料理もメジャーじゃなくて、この練馬のエリアには全然お店がなかったんですよ。だから「ここでやろう」と思って場所を決めました。「ここでやる!」と決めた時のワクワク感は今でも覚えてますね。
ケージー:最初から順調でしたか?

ノンさん:いや、それが全然(笑)夜は全くお客さんが来なくて、最初の3ヶ月は本当にヒマで。でも「何もしない時間を過ごすのはもったいない」と思って、手を動かしてメニューの研究をしたり、新しいレシピを考えたり、とにかく窓を綺麗に拭いてみたり(笑)、少しずつお客様に来てもらえるように頑張りました。
ケージー:そこから軌道に乗ったんですね!
ノンさん:そうですね。3ヶ月後にランチ営業を始めてから一気にお客さんが増えて、「やっとだ!」という気持ちになりました。今思えば、この場所で始めて本当によかったと思っています。
コロナ禍が生んだ「セントラルキッチン構想」 進化し続ける店舗運営

ケージー:オープンしてからの10年は順風満帆だったんですか?
ノンさん:全然です(笑)2021年、ちょうど10年目にコロナが直撃したんですよ。でも、意外と忙しかったんです。テイクアウト需要が一気に高まって、お店はずっとフル稼働状態。でもね、「これは失敗する」と思いました。
ケージー:このままだと失敗すると思われたんですか・・・?
ノンさん:忙しさに追われて品質が落ちるということです。大量に作って、ちょっと味が落ちたとか、商品管理ができなくなったら本末転倒ですから。そこから「近所にセントラルキッチンを作ろう」という構想が生まれたんです。最初はテイクアウト用にする予定だったけれど、「どうせなら飲食スペースも作ろう」ということで、2号店の形になりました。
ケージー:厨房の広さもこだわったとお聞きしました。
ノンさん:とってもこだわりました。冷凍食品にも対応できるように、急速冷凍機や真空パック機も導入しました。普通に家庭用冷凍庫で冷やすと、味が落ちるんですよ。だからショックフリーザーで一気に冷却して旨みを閉じ込める。冷凍食品も「美味しい」と思ってもらいたいから妥協しませんでした。
ケージー:すごい設備投資ですよね。
ノンさん:はい。正直、勇気が必要でした。でも、コロナの補助金もフル活用して(笑)、やれることは全てやったつもりです。店舗としての強さだけじゃなく、冷凍通販や自動販売機への展開も視野に入れています。駅の構内に冷凍自販機を置きたいと交渉もしたんですが、大手はなかなか腰が重くて…。
ケージー:それでも「挑戦」を止めない姿勢が素敵ですね!
家庭のルーツから店舗メニューまで 全ては“おばあちゃんの味”

ケージー:ノンさんのお店って、他のお店にはない特徴的なメニューが多いですよね。ラーメンや北部料理も出されていて。
ノンさん:全部、過去の経験から来てるんですよ。私はタイ北部のチェンライ出身で、昔から市場で働きながら、小学生の頃から魚の三枚おろしもやってたくらです。
ケージー:ええっ、すごい…。小学生で?まさに「本場の味」ですね。
ノンさん:はい。でも、ただ本場の味をそのまま出すんじゃなくて、日本人の舌にも合うように、絶妙に調整してるんです。ただ、時々シェフが独自のアレンジを加えちゃうこともあって。そういう時はすぐに「これは違う!」って厳しく注意しますよ。
ケージー:味のブレは絶対NGなんですね。

ノンさん:そう。味は記憶に残るものだから、バンハオの料理を食べて「また来たい」って思ってもらうために、絶対に妥協しない。すべては私のレシピとプライドです。
ケージー:本当に“家族で作ってきた味”なんですね。
ノンさん:その通りです。家族のルーツから始まって、それが店のアイデンティティになっている。だからこそ、この味を守り続けたいんです。
3店舗目への挑戦と“自転車で行ける範囲”という戦略

ケージー:今、3号店を出される予定と伺いました。どんな狙いがあるのでしょうか?
ノンさん:3号店は、5月16日にオープン予定なんです。基本的に「自転車で行ける範囲に店舗を作る」というのが戦略です。
ケージー:自転車で行ける範囲ですか?
ノンさん:そう。例えば大泉学園とか石神井公園は魅力的だけど、遠いと移動も大変だし、管理が難しくなるんです。バンハオの場合、練馬春日町周辺で3店舗目も出して、4号店までやりたいと思っています。
ケージー:すでに4号店まで計画してるんですね!

ノンさん:はい、最初から「4店舗までやりたい」って夫には伝えていて。言葉に出して宣言しないと、人間なあなあになっちゃうから。スタッフや家族にも常に伝えています。
ケージー:確かに、言葉にするって大事ですよね。
ノンさん:店舗を増やしても、絶対に味は妥協しないです。3号店も同じく本場の味を守りながら、広い店舗だからボトル制の導入も検討してます。自衛隊基地も近いので、自衛官の人たちが安心して集えるようなお店にしたいですね。
ケージー:地域密着で広げていくということですね。
ノンさん:そうです。大きく拡大して無理をするより、自分たちが見られる範囲で質を守りながら広げていく。それがバンハオのやり方です。
地域密着だからこそ実現する“お店と人”の関係性

ケージー:ノンさんのお話を聞いていると、本当に地域との繋がりを大切にされているんですね。
ノンさん:それが一番大事にしてるポイントですね!「女性と子供が安心して来られるお店」をコンセプトにしています。お酒好きのおじさん方がメインのお店じゃなくて、ママたちや家族が安心して集える場所にしたいんですよ。
ケージー:たしかに、女性や家族が多いとお店の雰囲気も自然と和やかになりますよね。
ノンさん:そう。実際にうちの店は夜でも家族連れや女子会で使ってくれる方が多くて、一人飲みの人でも周りがそういう空気だから自然と静かに飲んでくれる。トラブルなんて一切ないです。
ケージー:すごいです。それはお店作りの考え方がスタッフにもちゃんと伝わっている証拠ですね。
ノンさん:従業員も、自分たちの仲間やコミュニティの中から引っ張ってきてる人たちだから、本当に信頼できます。店同士も自転車で行き来できるから、「今日はこっち手伝って」って言えるし、フレキシブルに動けるんですよ。
ケージー:なるほど… それが「自転車で行ける範囲」という戦略にも繋がっているんですね。
ノンさん:そういうことです。距離が近いからこそ、店も人も繋がって、どこかが困ってたらすぐに助け合える。地域密着型って言葉は簡単だけど、こうやって「人の繋がり」を形にしていくのが本当の意味だと思っています。
「女性と子供が安心できる店」をこれからも—ノンさんからのメッセージ

ケージー:最後に、バンハオさんを応援してくれているお客様や、この記事を読んでいる方々にメッセージをお願いします!
ノンさん:本当にいつも来てくださっている皆さんに感謝しています。バンハオはオープン当初から「女性と子供が安心して来られる店」をコンセプトにしてきました。もちろん大人も楽しんでくれていいんだけど、ママたちや子供たちが自然と集まってくれる場所にしておきたいんです。
ケージー:確かに、安心できる場所っていうのはお客様にとって大きいですよね。
ノンさん:今後もその想いは変わりません。3号店、4号店と展開していく中でも、その軸はブレずに守り続けていきます。店舗が増えても、味も雰囲気も、そして「このお店は安心できる」と思ってもらえる場所を作り続けます。
ケージー:素敵です…!やっぱり、お店は料理だけじゃなくて、空気や人や信頼関係の集まりなんですね。
ノンさん:バンハオはその“空気”を作るためにやってるんです。だからスタッフも信頼できる人間ばかり、家族連れのお客さんも笑顔で帰っていく。そんな場所を、この街にもっともっと増やしていきたい。応援してくれている皆さんに恩返しできるように、これからも頑張りますので、ぜひ気軽に遊びにきてください。
ケージー:本日は本当にありがとうございました!