“トムヤムクンにすべてを懸けた男”─唯一無二の思想家「トムヤムジミー」の挑戦

エスニック料理、とりわけタイ料理を愛する人々の中で、今もっとも熱い視線を集める存在が「トムヤムジミー」さんです。

トムヤムクンは去年ユネスコの無形文化遺産に登録されたりと今タイ料理の中でもホットな料理となってます。

ジミーさんはトムヤムクンに宿る多様性と奥深さに魅了され、SNSでの発信を皮切りに、日本全国のタイ料理店を訪ね歩き、交流を重ね、文化祭のようなイベントまで主催するという稀有な活動を展開してきました。

そんなトムヤムジミーさんは、なぜトムヤムクンに人生を捧げる決意をしたのか。そして今後、どんな未来を描いているのか。“トムヤムクンの伝道師”の半生と想いに迫るインタビューをお届けします。

目次

“トムヤムクンの衝撃”─ひと口が人生を変えた瞬間

トムヤムジミーさん①
トムヤムジミーさん①

ケージー:本日はお時間いただきありがとうございます!まずはジミーさんがトムヤムクンと出会ったきっかけから、お聞きできればと思います。

トムヤムジミー:最初は2019年に初めてタイに行ったときですね。向こうでトムヤムクンを食べて、「あ、美味しいな」って思ったくらいで、それ以上の感情はなかったんです。だけど、日本に戻ってから大宮駅の構内にあるタイ料理店さんでたまたまトムヤムクンラーメンを頼んだんですよ。その一口目が……もう衝撃でした。

ケージー:どんな衝撃だったんですか?

トムヤムジミー:もうね、「なんだこの味は……」って。本当に酸味・辛味・甘味が混ざり合ってて、こんな個性の強い味が一つのスープで共存してるなんて思ってもみなかったんです。しかも、そのバランスが絶妙で、一言で言えば「世界観がある味」って感じでした。

トムヤムジミーさんとインタビュアー①
トムヤムジミーさんとインタビュアー①

ケージー:あの複雑な味を、一言でまとめるのは難しいですよね。

トムヤムジミー:そうなんです。でもあのとき僕は確信したんですよ。これはただの料理じゃない、現代社会に必要な“思想”だって。多様な価値観、いろんな違いが混ざって調和するって、まさに今の時代に必要なメッセージだなって。

ケージー:その瞬間に「これは広めるべきだ」と思った?

トムヤムジミー:完全に。あのときスープの中から“使命”みたいなものが降りてきた感じでした。もう「これは人生をかけて発信しなきゃいけない」って思いましたね。

思想としてのトムヤムクン─酸味・辛味・甘味が共存する世界観

トムヤムジミーさん②
トムヤムジミーさん②

ケージートムヤムクンを単なる料理としてじゃなく、“思想”として捉えるっていうのが、ジミーさんの面白さでもあると思います。その考え方は、どのように育っていったんでしょうか?

トムヤムジミー:僕自身、昔ちょっといじめられた経験があったりして、どこか「自分は普通じゃないかもしれない」と思ってたんですよ。でもトムヤムクンと出会ったときに、あのスープの中に「違っていい」「いろんなものがあっていい」っていうメッセージを感じたんです。

ケージー:確かに、トムヤムクンって一つの味じゃないですもんね。

トムヤムジミー:そう。酸味もあれば辛味もあって、甘味やコクもある。それらがぶつかるんじゃなく、調和してる。人間の個性もそうやって混ざり合えばいいんじゃないかって。僕にとってトムヤムクンは、“共存の象徴”なんです。

トムヤムジミーさんとインタビュアー②
トムヤムジミーさんとインタビュアー②

ケージー:それってめちゃくちゃエモいですね。

トムヤムジミー:トムヤムクンって、人生そのものなんですよね。辛いこともあるし、酸っぱい経験もあるけど、ちゃんと甘さもある。全部含めて一杯のスープになってる。それって、僕たちの人生と一緒じゃないですか。

ケージー:ジミーさんの中では、トムヤムクン=哲学なんですね。

トムヤムジミー:はい。だから僕は、「トムヤムクンの味と思想を広げる」という旗を立てて、ずっと活動してるんです。

トムヤムクンをコンテンツ化する─SNSを通じた自己表現

トムヤムジミーさん③
トムヤムジミーさん③

ケージー:トムヤムクンに出会って、それを“思想”として受け止めたあと、ジミーさんはどんなふうにこの活動を始めていったんですか?

トムヤムジミー:最初はInstagramも何もやってなかったんです。だけど、「これは広めなきゃいけない!」って思って、トムヤムクンを軸にSNSを始めたのがきっかけです。

トムヤムジミーさんのSNS投稿

ケージー:最初から“トムヤムクン専門アカウント”だったんですか?

トムヤムジミー:そうです。「トムヤムクンのことだけを投稿する」って決めて、2019年にアカウントを立ち上げました。最初は完全に“狂気じみた”感じでしたけど(笑)。

トムヤムジミーさんとインタビュアー③
トムヤムジミーさんとインタビュアー③

ケージー:えっ、どんな感じだったんですか?

トムヤムジミー:例えば、ラーメン屋の前で写真を撮って「これは裏メニューでトムヤムクンが出てくる店かもしれない」って投稿したり。何でもトムヤムクンに結びつけるっていう謎の情熱があって。完全に“思想投稿”だけで構成されてたアカウントでした。

ケージー:めちゃめちゃ尖ってますね(笑)

トムヤムジミー:ほんとに(笑)でも、そうやってやっていく中でちょっとずつ共感してくれる人が出てきて。それが嬉しくて、さらに投稿を続けていって。でも「このままじゃちょっとマニアックすぎるかも」と思って、一度アカウントをリセットして“アングラ6割、メジャー感4割”のバランスで再出発したんです。

トムヤムジミーさんのInstagram
トムヤムジミーさんのInstagram

ケージー:今の“トムヤムジミー”アカウントですね。

トムヤムジミー:はい。トムヤムクンをただの食レポじゃなく、思想・表現・コミュニケーションとして広げたい。そう思って今も活動しています。

“アングラからポップへ”─ステッカーがつないだトムヤム人脈

トムヤムジミーさん④
トムヤムジミーさん④

ケージー:ジミーさんの活動が大きく広がっていったきっかけを教えてください。

トムヤムジミー:最初の転機は、YouTuberの西尾さんとの出会いですね。彼がYouTubeを始める前からフォローしていて、「応援してます!」ってメッセージを送ったら、一応覚えててくれて。その後、西尾さん経由でデザイナーのカイさんと繋がったんです。

ケージー:それが、ジミーさんの今の活動につながっていくわけですね。

西尾さんのyoutube
西尾さんのYouTube

トムヤムジミー:はい。あるイベント・オフ会のときに「ステッカー作ってみたら?」ってカイさん夫妻に言われて、生まれたのが今のあのステッカーです。そこからは、「一緒に写真撮ってください」+「シール貼ってください」のセットで、活動の幅が一気に広がりました。

ケージー:確かに、ステッカーがあることで、より親しみやすくなった印象があります。

トムヤムジミー:まさにそれで、“アングラ感”がマイルドになって、「面白そうな人」って思ってもらえるようになったんですよね。ステッカーはただのアイテムじゃなくて、お店の人との関係性をつくるコミュニケーションツールにもなっていて。「この前も来てくれたよね」っていう会話のきっかけにもなりますし、写真とセットで“記憶装置”になってる感じです。

トムヤムジミーさんとインタビュアー④
トムヤムジミーさんとインタビュアー④

ケージー:ちなみに、タイ料理シェフとの写真って何枚ぐらいあるんですか?

トムヤムジミー:たぶん100枚以上はあると思います。日本一、いや世界一撮ってるかもしれないですね(笑)それだけ撮ってると、さすがにみんな顔を覚えてくれて、「この前ありがとう!」って言われるのが嬉しくて。

ケージー:フォロワーからすると、最初はちょっと“謎の人”っぽく見えるかもですが…。

トムヤムジミー:よく言われます(笑)でも、実際に会うと「甘みが強いトムヤムクンみたいな人だね」って言われることが多いです。辛味も酸味もあるけど、ちゃんと甘みもある、そんな存在になれたらいいなって思ってます。

繋がるトムヤムクン─方南町タイまつりへの挑戦

トムヤムジミーさんとインタビュアー⑤
トムヤムジミーさんとインタビュアー⑤

ケージー:トムヤムクンをSNSで発信していく中で、リアルな場への展開として「タイまつり」を主催されていますよね。あれはどういう経緯で始まったんですか?

トムヤムジミー:きっかけは方南町でトゥクトゥクレンタルをしてる齋藤さんとの出会いですね。あるとき「一緒に飲みましょう」って話になって、その場で「タイ料理屋を集めたイベントやりたいですね」って話が盛り上がって。

方南町タイまつりの様子①
方南町タイまつりの様子①

ケージー:まさに飲みのノリから生まれたんですね(笑)

トムヤムジミー:ほんとそうです(笑)でも、そこから「月イチでトゥクトゥク乗ってタイ料理食べに行く会」が始まって。で、その時に「じゃあ方南町でタイイベントやろう!」ってトントン拍子に決まりました。

方南町タイまつりの様子②
方南町タイまつりの様子②

ケージー:そういう流れで方南町タイまつりが決まったんですね!

トムヤムジミー:正直最初は不安もありましたよ。「誰が来るんだろう?売れるのかな?」って。でも、最初に出店してくれたお店の方たちが神だった。みなさんの支えがなかったら、今のタイまつりはなかったです。

ケージー:初回の方南町タイまつり、めちゃくちゃ混雑してましたもんね。

方南町タイまつりのチラシ
方南町タイまつりのチラシ

トムヤムジミー:あれは想像以上でした。商店街が人で埋まって、タイにしか見えなかった(笑)。でも、あの光景を見て、「これは続けなきゃいけない」って本気で思いました。

ケージー:あの場の空気感は唯一無二でしたね。で、タイまつりの開会式といえば…ジミーさんの“あの歌”。

トムヤムジミー:そう、国歌斉唱ならぬ「トムヤム斉唱」を歌う(笑)誰も止められないカオスが生まれて、それをみんなが受け入れてくれる雰囲気があって…もう「これが俺の場所だ」って思いました。

トムヤム斉唱を歌うトムヤムジミーさん
トムヤム斉唱を歌うトムヤムジミーさん

ケージー:めちゃめちゃ滑ってたっていうのを誰かから聞きました(笑) まさにトムヤムクンを通じて、人と人が繋がっていくのをリアルに体現してますよね。

トムヤムジミー:まさにそれです。思想だけじゃなく、空気と体温のある“場”として、トムヤムクンを媒介にしたい。タイまつりはその集大成ですね。

トムヤムジミーのこれからの啓蒙活動について

トムヤムジミーさん⑤
トムヤムジミーさん⑤

ケージー:ジミーさんが見据えるこれからの未来、トムヤムクン活動はどこへ向かっていくんでしょうか?

トムヤムジミー:まず大前提として、「逆算しない」っていうのが自分のスタンスなんです。目標から逆算して動くのは仕事で散々やってきたし、それが得意な人はたくさんいる。僕は“今、面白いと思うこと”を重ねていくことでしか前に進めないタイプで。

ケージー:積み重ねの先に“偶然”がやってくる、みたいな感覚ですね。

トムヤムジミー:そう。実際、「タイまつり」も、最初は商店街の副理事でありトゥクトゥクレンタルの齋藤さんと飲んでるときにポロッと出たアイデアだったんです。そこから「なんかやろう」って盛り上がって、最初は完全に文化祭ノリ。でも、やってみたら2時間で完売、SNSでもバズって、今ではタイ大使館後援イベントになってる。そんなふうに、面白さを信じて動いてきたら、社会がちょっとずつ応えてくれた感覚がありますね。

ケージー:めちゃくちゃ“トムヤム的”ですね、その偶発性と混ざり合いの感じ(笑)。

トムヤムジミー:まさに(笑)。今後は、タイ語も少しずつ習得したいです。やっぱり現地の人ともっとディープに繋がれたら、思想も活動も、もっと深くなると思うんですよね。

ケージー:トムヤムクンの思想を“世界語”にしていくフェーズですね。

トムヤムジミー:そうありたいですね。あと、誰もやってないことをやるのがやっぱり好きなんです。斜め上からのアプローチというか。

ケージー:ジミーさんらしいですね。

トムヤムジミー:ありがとうございます!そしてやっぱり、“ずっと続けること”が何よりも大事だと思ってます。熱が冷めたら少し距離を置いて、でもまた戻ってきて、漂い続ける。それがトムヤムクンみたいに、混ざり合いながら煮込まれていく人生だと思ってます。

ケージー:最後に、トムヤムジミーさんのファンの方々に一言お願いします!

トムヤムジミー:トムヤムクンを届けたい気持ちは変わらないので、生温かく見守ってくれたら嬉しいです!

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