Mr.Chicken 加藤代表が語る、シンガポールチキンライス普及の軌跡と未来—「専門店」で追求する本場の味

近年、日本でその人気と認知度を飛躍的に高めてきたシンガポールチキンライス。

キッチンカーや弁当販売で、多くの人々に本場のシンガポールチキンライスの味を届けているのが「Mr.Chicken」です。今回は、株式会社One Asia代表の加藤大夢さんに、Mr.Chickenの創業ストーリーから現在の事業展開、そして未来に向けた熱いビジョンまで、深くお話を伺いました。

目次

シンガポールチキンライスとの出会い——幼少期の原体験が原点に

株式会社One Asia代表 加藤大夢さん①
株式会社One Asia代表 加藤大夢さん①

ケージー: 本日はよろしくお願いします!まずは、Mr.Chickenの創業ストーリーについてお聞かせください。シンガポールチキンライスに注力されるようになったきっかけは何だったのでしょうか?

加藤さん: よろしくお願いします。簡単に言いますと、私は小学校4年生から高校までシンガポールに住んでいました。小学校からの友人と一緒に会社を立ち上げたのですが、彼とは中学生や高校生の頃によくチキンライスを食べていたんです。当時は日本円で150円〜200円くらいで食べられて、週に2、3回は食べていましたね

ケージー: なるほど、幼少期の原体験が事業の原点なのですね。その頃から「いつか日本でやろう」と考えていらっしゃったのでしょうか?

加藤さん: はい、漠然とですが「いつか日本でやろう」という話はしていました。親世代も「チキンライスなら日本でもいけるんじゃないか」と言っていましたし、当時、日本にはチキンライス専門店がほとんどありませんでしたから。

株式会社One Asia代表 加藤大夢さんとインタビュアー①
株式会社One Asia代表 加藤大夢さんとインタビュアー①

ケージー: そこからすぐに事業を始められたのですか?

加藤さん: いえ、すぐにではありません。日本に帰ってきて大学に進学し、そのまま社会人になりました。私はサラリーマンとして商社系メーカーに就職し、駐在でタイに3年半ほどいました。そこで資金を貯め、30歳になった時に会社を辞めて、Mr.Chickenを始めたんです。その間、共同創業者の友人は、シンガポールでチキンライスの修行をしていました。半年ほどお店で作り方を学び、着々と準備を進めていたんですよ。

ケージー: 満を持しての創業だったのですね。

キッチンカーから始まった挑戦——試行錯誤の店舗展開

株式会社One Asia代表 加藤大夢さん②
株式会社One Asia代表 加藤大夢さん②

ケージー: 創業当初はどのような形で事業をスタートされたのでしょうか?

加藤さん: 最初から実店舗を持つのはリスクがあると考え、まずはキッチンカーから始めました。日本でチキンライスが受け入れられるのか、マーケティングも含めて試してみようという狙いもありました。

ケージー: キッチンカーでの手応えはいかがでしたか?

加藤さん: 半年ほどキッチンカーで営業した後、「これはいけるんじゃないか」と感じて、すぐに実店舗を探し始めました。

株式会社One Asia代表 加藤大夢さん③

ケージー: 最初にオープンした実店舗はどちらだったのでしょうか?

加藤さん: 原宿にお店をオープンしました。竹下通りの裏手、駅から2、3分のところです。

ケージー: 原宿の人気エリアに出店されてたんですね!

加藤さん: そうなんです。ただ、残念ながら原宿店はあまりうまくいきませんでした。2年ほどで撤退することになり、賃貸契約の更新タイミングで店を閉めました。私たちのマーケティングミスだったと思います。原宿は外国人観光客が多いイメージですが、彼らは日本食を食べに来ていることがほとんどです。住んでいる外国人も、日本人と同じような食生活を送っていますし。インターナショナルなイメージとは裏腹に、住んでいる人が少ないエリアだったのも要因かもしれません。まだチキンライスが今ほど浸透していなかったこともあり、若者層にアプローチしきれなかった部分もありますね。

多角化で成長を加速——弁当事業とセントラルキッチンの構築

株式会社One Asia代表 加藤大夢さん④
株式会社One Asia代表 加藤大夢さん④

ケージー: 原宿店の撤退後、どのように事業を拡大していったのでしょうか?

加藤さん: 原宿店の撤退後、資金も底をつきかけたのですが、その間にキッチンカーを増やし、五反田の近くにある御殿山という場所で、10席ほどの小さな2号店をオープンし、再スタートを切りました。

ケージー: 2号店からは、新たな事業展開もされたのでしょうか?

加藤さん: はい。2号店からは、キッチンカーを増やしつつ、実はお弁当事業も始めました。お弁当とキッチンカーでキャパシティが限界になったら、次のお店を探す、という形で徐々に拡大していきました。今では北品川にセントラルキッチンを構え、そこでほとんどの仕込みを行っています。

キッチンかーの様子
キッチンかーの様子

ケージー: セントラルキッチンは非常に重要ですね。お弁当事業はどのように展開されているのですか?

加藤さん: セントラルキッチンを拠点に、JR品川駅やグランスタ東京駅などにお弁当を納品しています。キッチンカーとお弁当事業の二つの柱が、Mr.Chickenの大きな強みなんです。店舗ももちろん重要ですが、ビジネス的には投資が少なく済むキッチンカーやお弁当事業を増やしていきました。今ではキッチンカーは10台、お弁当の拠点は4つありますが、売り上げはキッチンカーと弁当事業でほぼ同等なんです。お弁当は配達系も行っており、企業内での個人デリバリーなども行っています。

ケージー: 柔軟な事業展開で成長を加速させてきたのですね。

シンガポールチキンライス普及の立役者として

株式会社One Asia代表 加藤大夢さんとインタビュアー②

ケージー: この10年で、シンガポールチキンライスは日本で非常に認知度が高まったと感じています。その立役者として、Mr.Chickenさんが果たした役割は大きいのではないでしょうか?

加藤さん: そうですね。自分たちで言うのもあれですが、やはり毎日10台のキッチンカーで提供していることが大きいと思います。圧倒的な量を提供していること、そしてメディアに取り上げられる機会が増えたことも要因だと感じています。多くの人がMr.Chickenの商品に遭遇する機会が増えたことで、認知度が向上したのでしょう。

ケージー: キッチンカーは、曜日ごとに決まった場所で営業されているのですか?

加藤さん: はい、基本的に平日は毎日10台が様々なオフィス街や病院、大学などを回っています。お客様も「月曜日はあのチキンライスが来る」というように、曜日ごとの営業を把握してくださっています。最近は、外国人観光客だけでなく、シンガポールチキンライスの味を「本物」だと理解してくださる日本のお客様も増えてきたと感じます。より深くチキンライスを知ろうとしてくださる方が多いですね。

ケージー: そうしたお客様にMr.Chickenならではのこだわりを伝えるために、何か工夫されていることはありますか?

加藤さん: 当社では、茹で鶏と揚げ鶏の2種類から選べるようにしています。これは日本にあるチキンライス専門店では珍しいサービスだと思います。シンガポールでは揚げ鶏も非常にポピュラーな食べ方なので、本場の楽しみ方を知ってほしいという思いもあります。また、キッチンカーでは品質を保ちつつ、いかに安く早く提供するかを重視しているため、もも肉のみを使用しています。

次なるステップはシンガポールチキンライス専門店の開業へ

株式会社One Asia代表 加藤大夢さん⑤
株式会社One Asia代表 加藤大夢さん⑤

ケージー: 今後、Mr.Chickenとしてどのような展望をお持ちしょうか?

加藤さん: 次に本当にやりたいのは、Mr.Chickenとは別のブランドでシンガポールチキンライス専門店を出すことです。

ケージー: 専門店ですか!ラーメン屋さんのようなスタイルを目指されるのでしょうか?

加藤さん: はい。ラーメン屋のように、チキンライスだけを専門に扱うお店です。Mr.Chickenは、チキンライスの「導入編」だと思っています。これを美味しいと思ってくれた方には、実はもっと奥深いチキンライスの世界がある、ということを伝えたいんです。

ケージー: 「本物のシンガポールチキンライス」を追求するのですね。価格帯も変わるのでしょうか?

加藤さん: 現在のMr.Chickenは、いかに安く早く提供するかを重視しているため、もも肉のみを使用し、クオリティも「最低限の高いレベル」で提供しています。しかし、専門店では、本場のシンガポールと遜色のない、よりクオリティの高いチキンライスを提供したいと考えています。シンガポールでも美味しいチキンライスは安く食べられますが、日本でとなるとやはりコストはかかります。ただ、めちゃくちゃ高くするつもりはありません。現行のMr.Chickenより2、300円くらい上げるイメージで、多くの方に体験してほしいと考えています。

Mr.Chickenさんのシンガポールチキンライス
Mr.Chickenさんのシンガポールチキンライス

ケージー: 専門店では、どのようなこだわりを考えていらっしゃいますか?

加藤さん:専門店では国産丸鶏にこだわり、米もソースもミスターチキンを更にレベルアップしたものを提供したいと考えてます。店舗をむやみに増やすのではなく、一つ一つの店舗で、品質にこだわり、お客様に満足していただける味を提供し続けたいと考えています。

東南アジアへの恩返し——食を通じた文化交流

株式会社One Asia代表 加藤大夢さん⑥
株式会社One Asia代表 加藤大夢さん⑥

ケージー: 最後に、Mr.Chickenのファンの皆様、そしてこれからの東南アジア料理に興味を持つ方々に向けて、メッセージをお願いします。

加藤さん: 私はシンガポールに10年、タイに4年と、人生の多くを東南アジアで過ごしてきました。幼少期に大変お世話になった東南アジアへの「恩返し」という意味でも、日本で東南アジアの食文化を広げていきたいと思っています。

ケージー: Mr.Chickenを通して、シンガポールチキンライスを知ってもらい、そこから東南アジアに興味を持ってもらう、と。

加藤さん: はい。Mr.Chickenを通してシンガポールチキンライスを知った方が、「シンガポールに行ってみよう」「タイに行ってみよう」と思ってくれるきっかけになれば嬉しいです。私自身もまた東南アジアに住みたいという思いがあります。日本でMr.Chickenのビジネスがさらに広がり、余裕ができれば、もっと東南アジアの途上国にも何か貢献できるようなことをしていきたいと考えています。

ケージー: 「ワンアジア」をコンセプトに掲げているとのことですが、どのような思いが込められていますか?

加藤さん: 当社は「ワンアジア」をコンセプトに掲げています。日本とアジアが一つになるようなことの一助になれれば、と願っています。チキンライスが、その架け橋の一つになれれば幸いです。

ケージー: 加藤さんの東南アジアへの深い愛情と、食文化を広める熱い思いが伝わってきました。今後のMr.Chicken、そして新ブランドの展開も楽しみにしています。本日は貴重なお話をありがとうございました!加藤さん: ありがとうございました!

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