「ベトナム料理の魅力を広げ、現地の味を届けたい」と語るのは、バインミーバーバーのオーナー・多和さん。
コカ・コーラで17年間勤務しながら、全国各地でベトナム料理店やベトナム人労働者の増加を実感し、ベトナム料理の可能性に惹かれたといいます。36歳で独立し、2019年にバインミーバーバーの経営を引き継がれました。
今回は、多和さんにインタビューを実施し、ベトナム料理との出会いや、下北沢でバインミー文化を築くまでの挑戦、そして今後の展望についてお話を伺いました。
ベトナム料理との出会いと起業のきっかけ
ケージー:ベトナムとの出会いはどこからだったんですか?
多和さん:私は元々17年間コカ・コーラで働いていて、サラリーマンでした。拠点は福岡だったのですが、全国を飛び回る中で、ベトナム料理屋さんが増えていること・様々な企業でベトナム人の雇用が増えていると感じたところが始まりでした。
ケージー:なるほど!日本で東南アジアの勢いを体感され、そこからベトナム料理に挑戦することになるんですね!コカ・コーラさんを辞め、独立しようと思ったのはいつ頃だったんですか?
多和さん:私が36歳の時でした。当時、子供も大きくなっていたので、脱サラし、起業したいという想いがありました。また、起業するなら飲食店をやりたいと思っていた一方で、普通の飲食はやりたくありませんでした。飲食で面白い領域は何かと考えた時に、ベトナム料理の美味しさと東南アジアの勢い・今後のポテンシャルに惹かれたので、ベトナム料理に挑戦することにしました!
バインミーバーバーの経営を引き継ぐまでの経緯
ケージー:そこからバインミーバーバーさんが始まるんですね!創業当初のお話しについてお伺いしたいです!
多和さん:実はバインミーバーバー(以下バーバー)はベトナム人ご夫婦で会社をやられていて、売上が伸び悩んでいたことや店長の妊娠のタイミングが重なったことなど重なり、バーバーをやってくれないかとお話しをいただきました。その後、3回ほど東京に来て、下北沢の人の流れや店舗の様子を視察しました。当時、下北沢店前の人の流れはほとんどなく、また今ほどバインミーの認知もなかったのですが、SNSなど頑張っていけばなんとかなるかなと思い、2年目の2019年以降から私が代表になり経営を引き継ぎました。
現地視察から学んだ日本でのバインミー展開の工夫
ケージー:元々ベトナム人のオーナーさんがいらっしゃったんですね!多和さんがバーバーさんに入ってから、どんな取り組みをやられたんですか?
多和さん:まずはバインミーについて理解を深めるため、2週間程ベトナムに行き、パンのことから全て調査・勉強しました。当時、日本にあるタイ料理屋さんやベトナム料理屋さんはレストランスタイルで、単価を上げているお店が多かったのですが、現地を視察する中で、日本のスタイルに寄せず、現地のストリート系の開放感あるお店でも十分運営していけると手応えを感じました。
またバーバーは当時、入口にお店の様々なPOPを貼っており、日本人にとっては入店しづらい、勇気が必要な店舗であったため、ベトナム現地の雰囲気を意識しつつ、日本人も入店しやすい開放感のある店舗づくりを意識しました!原価や配送費の高騰はあるのですが、現在も現地のストリートフードを貫いています。
![バインミーバーバー下北沢の内観](https://ethnic-magazine.com/souken/wp-content/uploads/2025/02/DSC00526-1024x683.jpg)
ケージー:日本人も来店しやすい店舗の雰囲気って本当に大事ですよね(笑)バーバーさんは日本人も来店しやすくかつ、店内ではベトナム現地のお店であるようなカラーの椅子を使われているので、ベトナム気分が味わえる体験ができると感じています!その他にも引き継ぎ当初の取り組みはあったんですか?
多和さん:スタッフと一緒に色んな店舗を訪問したり、駅に立ってチラシを配ってみたりと死に物狂いで認知獲得・味の改善に取り組みました。しかし、最初は本当に売れなかったので、毎日廃棄もたくさん出ていましたし、パンは品質低下が早いので、お客様に美味しいバインミーを提供し続ける難しさも感じていました。
ケージー:当時の取り組みや苦悩が今のバーバーさんに繋がっているんですね!売上も徐々に伸びてきたと思うのですが、そこから拡大するために何か仕掛けは行ったんですか?
多和さん:周年祭やFCの店舗オープンのタイミングでPR TIMESを出したことで、メディアやテレビで取り上げられ、認知が拡大していきました。特に所ジョージさんの番組で取り上げていただいた時は反響が大きく、FCの加盟店が4店舗まで増えていきました。その後はPR TIMESは出していないのですが、SNSを中心に認知が広がっていて今に至ります。
認知拡大とフランチャイズ展開の戦略
ケージー:拡散が拡散を呼んで認知拡大させていったんですね!ちなみに直営ではなく、FCで店舗を増やされた理由はあるんですか?
多和さん:もちろん私が直営で運営する選択もあるのですが、雇われで店舗を運営することには限界があると考えています。一方でFCだと、もちろんサポートはしますが、自分たちのお金で店舗を運営します。FCにすることで、当事者意識も生まれますし、店舗が上手くいった時の加盟者のリターンも大きいと考えています。
ケージー:なるほど!飲食店を運営していると、目の前の運営に精一杯になり、FC展開など考えつかないと思うのですが、多和さんご自身が飲食店を運営する形以外でビジネスが出来たのはサラリーマンとして働いていたご経験があったからでしょうか?
多和さん:そうだと思います!広い視点でビジネスを考えることが出来るようになりましたし、大きなコスト削減をする時の考えはサラリーマン時代の経験が活きています。
ケージー:そうだったんですね!先程、原価の高騰というお話しがありましたが、バーバーさんのバインミーってリーズナブルでそしてボリュームがある印象です。何かコスト削減の観点で工夫されていらっしゃることはあるんですか?
![バインミーバーバーの店長・多和さん](https://ethnic-magazine.com/souken/wp-content/uploads/2025/02/DSC00507-1024x683.jpg)
多和さん:店舗を増やしたことが大きいです。現在、直営で2店舗・フランチャイズで4店舗・その他卸しもしているのですが、パンについてはOEM(=Original Equipment Manufacturing)製造を行っています。もちろん店舗でパンを作ることも出来るのですが、店舗運営の負担が増大してしまうこと、OEM製造で大量に発注した方が全体のコストが下がるため、パンについてはOEM製造を行っています。
ケージー:パンを作る工程に関しては別のプロにお願いすることで、全体のコストを下げているんですね!多和さんバーバーさんを引き継いだ当初パンの品質管理に苦戦されたということでしたが、そこについても何か対策をされたのでしょうか?
多和さん:はい、大手企業と開発した瞬間冷凍技術を使い、いつでも美味しいパンを提供できる体制を構築しました。
ケージー:引き継ぎ当初の課題を解決した上で、品質を落とさず、店舗拡大出来ているんですね!
ケージー:これまで何度もバーバーさんには食べに来ているのですが、毎回多和さんいらっしゃる印象なんですが、店舗に立たれている目的はあるんですか?
多和さん:単純に私が店舗に立つのが好きだからです(笑)バーバーを始めた時はビジネスとして開始していたのですが、やはりお客様と関わるのは楽しいですし、現場に立つことで環境の変化に気づきやすいことも大きいです。
ケージー:多和さん自ら顧客に1番近い現場に立たれているからこそ、課題も明確になり、柔軟に変化出来ているんだと感じました!
これからのバーバーの展望と広島出店への想い
ケージー:続いて今後の展望について教えてください!
多和さん:世の中の流れに合わせるというか、目の前のことに集中していこうと思っているのですが、バーバーの味をもっと広げていきたいと考えています!今年4月に私の地元広島にバーバーがオープンする予定なので、まずは広島にバーバーの味を届けていきたいと思います。
ケージー:広島にオープンされるんですね!!広島オープンに至ったきっかけは何だったんですか?
多和さん:広島はFCになるのですが、ご縁あって広島の企業さんからお問い合わせがあり、話がトントン拍子で進みました。広島もこの6,7年でベトナム人の人口が5倍くらいになっていて、今後ベトナム料理屋さんも増えてきそうなので、楽しみです!
ケージー:僕も香川出身なので、中国四国地方にエスニック旋風をバーバーさんが巻き起こしてくださることを楽しみにしています(笑)
ケージー:最後に読者の方に一言いただきたいです!
多和さん:バーバーではベトナム現地の子たちが作っているので、気軽にご来店くださり、ベトナム気分を味わってもらえたら嬉しいです!
ケージー:本日はお時間いただき、ありがとうございました!