アジアン料理と聞くと、屋台のようなカジュアルなイメージを思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?しかし、近年は「洗練されたアジアンレストラン」が増えつつあります。その最前線を走るのが、「HUGE」のアジアン業態です。
HUGEは、リゴレットなど数々の人気レストランを展開し、エンターテイメント性の高いダイニング体験を提供してきました。そのHUGEが手がけるアジアン業態は、本格的な味わいと洗練された空間を融合させた新しい形のアジアンレストランとして注目を集めています。
今回お話を伺ったのは、HUGEのマーケティング・広報担当であり、アジアン業態の開発にも深く関わる秋山さん。
インタビューでは、秋山さんがアジアン料理と出会ったきっかけから、HUGEでの挑戦、そして今後の展望まで、たっぷりとお話を伺いました。HUGEのアジアン業態がどのように生まれ、どのように進化していくのか、その魅力を一緒に探っていきます。
小学生時代に「料理の楽しさ」を知る – キャリアの原点
ケージー:本日はよろしくお願いします!秋山さんのこれまでのキャリアについて、いろいろお伺いできればと思っています。さっそくですが、料理の道に進もうと思ったきっかけは何だったんですか?
秋山さん:小学生のときに『テレビチャンピオン』の料理大会に出場したことですね。当時、親が料理番組をよく見ていて、私も自然と料理に興味を持つようになりました。それで番組の募集を見つけて応募したんです。実際に大会に出てみたら、料理を作ることはもちろん、人と関わりながら食事を提供することが楽しいと感じて、それがずっと心に残っていました。
ケージー:小学生で料理大会に出るってすごいですね!その経験が、今のキャリアの原点になっているんですね。
秋山さん:そうですね。大会の経験をきっかけに、将来は飲食の世界で働こうと決めました。そこからずっと料理の道を突き進んでいます。
ケージー:まさに一本筋が通っていますね!そこから高校や大学でも料理の勉強を続けたんですか?
秋山さん:はい。高校では調理科を専攻し、さらに短大では食文化専攻を学びました。ただ料理の技術を学ぶだけじゃなく、食材の背景や文化についても深く学ぶことができたので、今の仕事にもすごく役立っています。
ケージー:確かに、料理の知識だけでなく、文化的な背景を理解していると、飲食の世界での強みになりますよね。それで、新卒ではグローバルダイニングに?
秋山さん:そうです。外食産業の大きな会社で経験を積みたかったので、グローバルダイニングを選びました。最初は舞浜のモンスーンカフェでキッチンスタッフとして働き始めました。
ケージー:いきなりエスニック業態だったんですね!それは狙っていたんですか?
秋山さん:いえ、偶然なんです。家から通いやすい場所にあったという理由で配属されたんですが、結果的にエスニック料理と深く関わることになりました。
ケージー:運命的ですね!小学生のときの経験があって、高校・短大としっかり学んで、さらに大手飲食企業で実務経験を積む…完全に飲食業界一本で歩んできたんですね。
秋山さん:そうですね。気づけばずっとこの道を進んでいました。でも、それくらい料理が好きなんです。
グローバルダイニングでの経験 – 現場から商品開発へ
ケージー:モンスーンカフェでのスタートということですが、実際に働いてみてどうでしたか?
秋山さん:想像以上にハードでしたね。特に仕込みの量がとんでもなく多いんですよ。生春巻きなんて、1日に何百本も巻いていました(笑)でも、その経験があったからこそ、飲食業のリアルな大変さも、やりがいも知ることができました。
ケージー:確かに、大箱の飲食店はオペレーションのスピードや正確性が求められますよね。そこからどんな流れで本社勤務になったんですか?
秋山さん:しばらく現場で働いたあと、商品開発部門(商品企画室)が立ち上がることになって、そこに異動しました。当時まだ20歳そこそこでしたが、新メニューの開発やブランド全体の企画に関わることになりました。
ケージー:すごいですね!若くして商品開発の仕事を任されるのは、やっぱり現場での経験が評価されてたんですか?
秋山さん:実は、新卒採用の段階で商品開発に配属されることは決まっていたんです。現場にはインターンで少し入っていたので、全くの未経験ではなかったんですけど、やっぱり最初は本当に手探り状態でしたね(笑)。エスニック料理を専門的に学んできたわけではなかったので、タイ料理の基本から勉強し直しました。それこそ、タイの調味料や食材の組み合わせを研究したり、現地のレストランを食べ歩いて味の違いを確かめたりしましたね。
ケージー:現場から本社に行くと、また違った視点で料理と向き合うことになりますよね。商品開発の仕事をする中で、特に印象に残っていることはありますか?
秋山さん:一番大きかったのは、メニューは料理だけじゃなく、体験を提供するものだと学んだことですね。ただ美味しいものを作るだけではなく、お客様がその料理をどう楽しむのか、どういうシチュエーションで食べるのかを考えながら開発する必要がある。例えば、カオマンガイひとつとっても、提供の仕方や見せ方で印象が変わるし、味の方向性も変わるんです。
ケージー:なるほど、単に味を決めるだけじゃなくて、提供するスタイルやお店全体のコンセプトも考えながら作るんですね。
秋山さん:そうです。グローバルダイニングの頃は、そういうブランディングの視点を学べたのが大きかったですね!
ケージー:でも、その後、商品開発ではなく、もう一度現場に戻ることになるんですよね?
秋山さん:そうなんです。本社での仕事も面白かったんですが、やっぱり現場でお客様と直接関わる仕事がしたいと思ったんです。それで、一度グローバルダイニングを辞めて、飲食店の店長として働くことにしました。
ケージー:そういう経緯があったんですね!
秋山さん:そうなんです。自分の中で、飲食の本質はやっぱり“お客様と料理を通して繋がること”だと思っていたので。今考えると、あの選択があったからこそ、次のキャリアに繋がったんだと思います!
HUGEの立ち上げ – 創業メンバーとしての挑戦
ケージー:グローバルダイニングを辞めて現場に戻った後、どのような流れでHUGEさんの創業に関わることになったんですか?
秋山さん:ちょうどそのタイミングで、HUGEの代表・新川(しんかわ)がグローバルダイニングを退職することになって、彼から声をかけてもらったんです。『新しい会社を作るから、手伝ってくれないか?』って。
ケージー:それで創業に関わることになったんですね?
秋山さん:そうなんです。でも正直、最初の1~2店舗を手伝ったらまた別の道を考えようかなって思っていました。でも、実際に関わってみたら想像以上に面白くて。気づけば、HUGEの立ち上げメンバーとしてどっぷりハマっていました。
ケージー:当時のHUGEさんって、どんな感じだったんですか?
秋山さん:本当にゼロからのスタートでした。最初はたった3人だけで、親会社のオフィスを間借りして、打ち合わせをしていました。新川、私、もう1人の神山(かみやま)の3人で、何から何まで自分たちでやるしかない状態。
ケージー:それはまさに“創業期”って感じですね!
秋山さん:そうですね。私の担当は主にブランド作りやクリエイティブ全般。どんなお店にするか、どんな料理を出すか、どうやってお客様に届けるか……すべてを考えながら動いていました。
ケージー:一番最初に手掛けたのは、どのお店だったんですか?
秋山さん:2006年にオープンした『リゴレット』の1号店ですね。吉祥寺にスパニッシュイタリアンのレストランを出しました。
ケージー:HUGEさんといえばリゴレット!今ではいろんなエリアに展開されていますが、最初は吉祥寺だったんですね。
秋山さん:はい。吉祥寺って、東京の中でも“食”にこだわる人が多い街なんですよね。だからこそ、料理も空間も、しっかり作り込まないと支持されない。おかげで、オープン当初からすごく鍛えられました。
ケージー:HUGEさんのブランドとしての方向性は、最初から明確だったんですか?
秋山さん:いや、手探りでしたね(笑)でも、新川の中には“世界基準のレストランを日本で展開する”っていうビジョンがあって、私もそれに共感したんです。だから、単なるスペインバルではなく、ちゃんとしたダイニングとしてのクオリティを持った店を作ることにこだわりました。
ケージー:確かに、HUGEさんのお店ってカジュアルすぎず、それでいて気軽に入れる絶妙なバランスですよね。
秋山さん:そこが大事なんです。「ちょっと背伸びしたいけど、気軽に楽しめる」っていうバランスを意識しています。
ケージー:それにしても、創業メンバー3人から、今ではHUGEさんって何店舗くらいあるんですか?
秋山さん:現在は約40店舗、スタッフは約1800人になりました。
ケージー:3人から1800人…すごいですね!
秋山さん:本当にここまで来るとは思ってなかったです(笑)でも、「お客様にとって価値のあるレストラン」を作り続けるという軸は、創業当時から変わっていません。
ケージー:HUGEさんの成長とともに、秋山さん自身の役割もどんどん変わっていったんじゃないですか?
秋山さん:そうですね。最初は私自身も現場で料理を作っていましたし、メニュー開発もやっていました。でも、会社が大きくなるにつれて、徐々にブランディングやマーケティングの領域にシフトしていきました。
ケージー:なるほど、ただのレストラン運営じゃなくて、“HUGEというブランド”を作る仕事に移行していったんですね。
秋山さん:そうです。HUGEを単なる飲食店の集合体じゃなく、「HUGEらしい世界観」を持つブランドにすることが、私の大きな役割になりました。
ケージー:HUGEさんがこれだけ成功したのは、やっぱりそのブランディングの力が大きいんですね。
秋山さん:そうかもしれません。でも、やっぱり大事なのはお客様が“また来たい”と思える店を作ること。そこに尽きると思います。
HUGEがアジアン業態に挑戦した理由
ケージー:HUGEさんといえばリゴレットのようなスパニッシュイタリアンのイメージが強いですが、アジアン業態に進出したのはどのタイミングだったんですか?
秋山さん:最初のアジアン業態は2017年にオープンした『ジンジャーグラス モダンタイベトナメーゼ』ですね。実はそれまでHUGEでは、アジアン業態には手を出していなかったんです。
ケージー:意外ですね!秋山さん自身は、もともとモンスーンカフェ出身ですよね?
秋山さん:そうなんです(笑)だから、アジアン料理にはずっと親しみがあったし、やりたい気持ちもありました。ただ、当時のHUGEではスパニッシュやイタリアン業態がメインだったので、なかなか機会がなかったんですよね。
ケージー:じゃあ、なぜ2017年にアジアン業態をスタートすることになったんですか?
秋山さん:きっかけは、新宿の『ジンジャーグラス』の物件が空いたことですね。もともとHUGEは物件ありきで店舗展開を考える会社なので、「この場所に合うコンセプトは何か?」っていう視点から企画を考えます。
ケージー:なるほど。新宿のあの立地にフィットする業態として、アジアンを選んだんですね!
秋山さん:そうですね。でも私たちが目指したのは、いわゆる「アジアのストリートフード」ではなくて、洗練されたダイニングレストランとしてのアジアンでした。
ケージー:なるほど。屋台のようなカジュアルさではなくて、HUGEらしい上質なスタイルで打ち出したんですね。
秋山さん:そうです。だから、内装や空間づくりにもこだわって、タイやベトナムのアジアンリゾートにあるレストランをイメージしました。ただ料理を出すだけでなく、非日常を感じてもらえるような空間を目指したんです。
ケージー:実際にオープンしてみて、どうでしたか?

秋山さん:正直、最初は苦戦しました(笑)アジアン業態って、イタリアンやフレンチよりも「選ばれるハードル」が高いんですよね。
ケージー:たしかに、会食やデートで「アジアン料理にしよう!」ってなるのは、まだ少し難しいですよね。
秋山さん:そうなんです。イタリアンやフレンチは「とりあえず失敗しない」っていう安心感があるけど、アジアンは「辛そう」「パクチーが苦手」みたいな先入観を持たれやすい。
ケージー:そういう印象を変えるために、何か工夫されたことはありますか?
秋山さん:一番意識したのは、メニューの構成ですね。『アジアン=辛い』って思われがちなので、辛くない料理もちゃんと揃えて、幅広い層が楽しめるようにしました。たとえば、トムヤムクンは旨みたっぷりな仕上がりにしたり、ベトナム料理のフォーも優しい味付けにしたり。
ケージー:なるほど、そういう工夫があるから、HUGEのアジアン業態って万人に受け入れられるんですね。
秋山さん:それに加えて、お酒とのペアリングも重視しました。アジアン料理ってビールのイメージが強いけど、HUGEはワインに合うペアリングを提案して、新しい楽しみ方を伝えたんです。
ケージー:ワインとアジアン料理の組み合わせ、すごく面白いですね!
秋山さん:そうなんです!意外と合うんですよ。特にロゼワインやフレッシュな白ワインはアジアン料理との相性が抜群なんです。
ケージー:そうやって、「HUGEさんらしいアジアン」を作り上げていったんですね。
秋山さん:そうですね。でも、まだまだ発展途上。もっとアジアン業態を広げていきたいと思っています!
「アジアン=カジュアル」の常識を変える、HUGEの挑戦
ケージー:ジンジャーグラスをオープンされて数年が経ちましたが、アジアン業態としての手応えはいかがですか?
秋山さん:徐々にですが、確実に感じています。最初は「アジアン=カジュアル」という固定観念を崩すのに苦労しましたが、HUGEならではのスタイルを確立できたことで、徐々に認知も広がってきましたね。
ケージー:確かに、アジアン料理って「手軽で安い」イメージが強いですけど、HUGEさんのアジアン業態は、上質で洗練されたアジアンダイニングとして新しい形を作っていますよね。
秋山さん:そうなんです。実際「HUGEのアジアンなら行ってみたい」と言ってくれるお客様が増えているのがすごく嬉しくて!特に、アジアン料理に馴染みがない人でも「HUGEなら安心」と感じてもらえるようになったのは大きな収穫ですね。
ケージー:まさに、アジアン料理の新しい扉を開いている感じですね。今後も、さらに新しいことに挑戦される予定なんですか?
秋山さん:もちろんです!まだまだやりたいことはたくさんありますし、アジアン業態の可能性はもっと広がると信じています。
ケージー:これからの展開が本当に楽しみです!最後に、読者の方へメッセージをお願いします!

秋山さん:アジアン料理はもっと自由で楽しいものです。辛さが苦手な方も、初めての方も、HUGEのアジアン業態なら新しい発見があると思います!ぜひ一度、気軽に足を運んでみてください!
ケージー:素晴らしいメッセージをありがとうございます!改めて本日はお忙しい中、インタビューさせていただき、ありがとうございました!
秋山さん:こちらこそ、ありがとうございました!