2025年で自身の料理教室「ティッチャイ タイフード」15周年を迎えます。
メイさんは会社員からタイ料理の道へ飛び込み、料理教室の運営やメニュー開発、企業とのコラボレーションなど、さまざまな形でタイ料理の魅力を広めてきました。
そんなタイ料理研究家のメイさんに、これまでの歩みやタイ料理への思い、そして今後の展望についてお話を伺いました。
会社員からタイ料理の世界へ―運命を変えた一皿のパッタイ
ケージー: 本日はよろしくお願いします!
メイさん: こちらこそ、よろしくお願いします!
ケージー: さっそくですが、料理研究家としての活動は2002年からスタートされたそうですね。でも、それ以前はまったく別の業界にいらっしゃったとか?
メイさん: そうなんです。若い頃は会社員で、総務課にいました。電話応対やワープロ入力、郵便局への手配、さらにはお茶くみまで…。いわゆる「なんでもやる総務」の仕事ですね。でも、どうしても「楽しい」と思えなかったんですよね。
ケージー: そこから、どうしてタイ料理の道に進まれたんですか?
メイさん: ある日、友人に「近くにタイ料理屋さんができたから行ってみよう」と誘われたんです。それが、千葉・船橋にあった「アユタヤ」というお店でした。当時は1990年代で、日本ではタイ料理自体がまだ珍しい時代。そこで初めて食べたパッタイが、もう衝撃的に美味しくて! 甘酸っぱさ、食感、香り…すべてが新鮮でした。
ケージー: そこでタイ料理にハマったんですね!
メイさん: そうなんです。会社の帰りに毎日のように通って、すっかり常連に。そのうち「ここで働きたい!」と思うようになり、オーナーのタイ人女性にお願いしました。でも最初は「会社員なのにダメよ」と断られて…。
ケージー: でも、諦めなかったんですよね?
メイさん: 何度もお願いしているうちに「本当にやるの?」と受け入れてもらえたんです。それで会社を辞め、アルバイトとして働き始めました。最初は皿洗いやエビの殻むきから。もちろん、言葉もタイ語もわからない状態で、「コップンカー」を覚えるところから始めました(笑)
ケージー: まったく未経験の状態から、タイ料理の世界に飛び込んだんですね!
メイさん: そうなんです。そのお店には6年ほどいて、厨房にも少しずつ入らせてもらえるようになりました。最初は本当に大変でしたが、そこでタイ語も学びながら、料理の基礎を身につけたんです。
タイ料理を極めるために―現地での学びと新たな挑戦
ケージー: 6年間、お店で修行を積まれたとのことですが、その後はどうされたんですか?
メイさん: これは、「アユタヤ」で働いていた時からですが、もっとタイ料理の奥深さを知りたいと思い、現地に足を運ぶようになりました。実際にタイへ行ってみると、日本では提供されていない料理がたくさんあったんです。メニューに載っていないけど、現地の人たちが日常的に食べているものが多くて、「これは日本でも紹介したい!」と思うようになりました。
ケージー: なるほど!実際に現地で学びながら、日本では知られていない料理を発掘したんですね。
メイさん: そうですね。日本のタイ料理店では、ガパオやトムヤムクン、パッタイがメインでしたが、タイには地方ごとに異なる料理がたくさんあります。特に北部料理、南部料理や東北部(イサーン)の地方料理に興味を持ちましたね。
ケージー: そこから、料理教室の道に進まれたんですか?
メイさん: はい。ただ、最初は店舗を持つことも考えていました。でも、資金が足りなくて…。お店を開くには800万以上必要だったんですが、私の手元には300万しかなくて。だったら「日本にはないタイ料理を紹介する仕事」にしようと思い、料理教室を開くことに決めたんです。
ケージー: それが、料理研究家としての活動の始まりなんですね。
メイさん: そうですね。最初はインドネシアの料理サークルがきっかけでした。その後、都内のスタジオを借りて、少人数制で教えていました。文化センターの講師でもタイ料理を教える機会をもらいました。最初は本当に手探りでしたが、少しずつ受講生が増えていきましたね。
ケージー: 場所を転々としながらの開催は大変そうですね….
メイさん: そうなんです。調理器具や食材を毎回運ぶのが本当に大変で…。そんな時、「やっぱり自分の場所が必要だな」と思い、2010年に料理教室のためのスタジオをオープンすることを決めました。
料理教室「ティッチャイタイフード」の誕生―タイ料理の魅力を日本に広める
ケージー: 2010年に料理教室のスタジオをオープンされたんですね!場所はどうやって決めたんですか?
メイさん: いろいろ考えましたね。まず、自宅からアクセスしやすい場所であること。それから、タイの食材店が近くにあって、必要な材料をすぐに調達できること。この条件に合うのが錦糸町だったんです。
ケージー: 確かに、錦糸町はタイ食材店や飲食店が多いですよね。
メイさん: そうなんです。日本で有名なタイ食材の卸業者さんが2社もあって、食材の調達がしやすい。それに、総武線や半蔵門線も通っていて、駅近で探していたので生徒さんも通いやすいんですよね。
ケージー: なるほど。スタジオを構えてみて、最初の反応はどうでしたか?
メイさん: 最初は全然人が来なくて…。料理教室を始めたとはいえ、知名度もなかったので、どうやって集客すればいいのか手探りでした。
ケージー: それは大変ですね。どうやって乗り越えたんですか?
メイさん: ちょうどその頃、NHK BS1の「アジわいキッチン」という番組に出演することになったんです。それが大きな転機でしたね。
ケージー: おお、それはすごい!どんな内容だったんですか?
メイさん: タイの市場を巡りながら、現地の料理を紹介するという番組で、数週間にわたって放送されました。最初は反響がなかったんですが、お盆の時期に1時間の特番が組まれたんです。その放送を見た方が「長澤恵」を検索してくれて、一気に問い合わせが増えました。
ケージー: まさに転機ですね!
メイさん: そうですね。番組をきっかけに生徒さんが増え、料理教室が軌道に乗るようになりました。それ以来、「日本にまだ知られていないタイ料理を伝える」という軸で活動を続けています。
「ティッチャイタイフード」の料理教室が目指すもの―未紹介のタイ料理を日本へ
ケージー: ティッチャイさんでは、どんな料理を教えているんですか?
メイさん: うちは、いわゆる「定番のタイ料理」はもちろん、日本ではまだ知られていない料理を積極的に紹介しているんです。例えば、南部の食材を使ったカレーや、プーケットの伝統料理、現地の屋台でしか食べられないようなメニューなどですね。
ケージー: それは面白いですね!生徒さんたちの反応はどうですか?
メイさん: 皆さん、タイ料理のディープな世界に入ってくれます(笑)うちの生徒さんは90%以上がリピーターで、「次はもっと珍しい料理を教えてほしい!」っていう声が多いんです。
ケージー: すごいリピート率ですね!どんなメニューが人気ですか?
メイさん: 最近だと、「トム・ジウ」というタイ伝統料理の牛肉とサツマイモのスープとか、もち米の上にココナッツミルクで作ったプリンを乗せた「カオニオーナーサンカヤー」、それからパイナップルとココナッツロングの和え物とか、ちょっと日本では珍しいものが人気ですね。
ケージー: どれも聞いたことない料理ばかりですね!
メイさん: そうなんです。日本では見かけないけど、タイでは普通に食べられている料理を広めたいと思ってやっています。タイ料理って「グリーンカレー」とか「ガパオライス」にもたくさんの料理があるっていうのを伝えたいんですよね。
ケージー: 確かに、日本のタイ料理のイメージって、まだ限られたメニューに偏りがちですよね。
メイさん: そうなんですよ。でも、実際に食べてみると、どれも美味しいし、作るのもそんなに難しくない。だから、料理教室を通じて、もっといろんなタイ料理を家庭で作れるようになってもらえたら嬉しいですね。
料理教室から広がるタイ料理の魅力―家庭の食卓にタイ料理を
ケージー: 料理教室を続ける中で、一番やりがいを感じる瞬間はどんなときですか?
メイさん: 「家族がすごく喜んでくれました!」っていう声を聞いたときですね。例えば、生徒さんが「夫がタイ料理をあまり食べなかったけど、今日の料理は美味しいって言ってくれました!」とか、「友達にふるまったらすごく好評でした!」って教えてくれるんです。
ケージー: それは嬉しいですね!料理教室をやっているからこそ聞ける感想ですね。
メイさん: そうなんです。うちの教室に来てくれる方は、もともとタイ料理が好きな方が多いんですけど、それを家庭に持ち帰って、家族や友人とシェアしてくれるのが本当に嬉しいですね。タイ料理って、もっと日本の食卓に溶け込めると思っていて。

ケージー: 確かに、日本の家庭でもっと気軽にタイ料理が食べられるようになったらいいですよね。
メイさん: そうなんです。だから、教室では本場の調味料を使って紹介していますが、代用品やアレンジ方法もご紹介しています。
ケージー: なるほど!本場の味を大事にしながら、日本の家庭でも作りやすいように工夫してるんですね。
メイさん: そうですね。でも、やっぱり現地の味をできるだけ再現したいので、調味料の選び方や食材の使い方のコツはしっかり伝えています。
ケージー: 料理を学ぶだけじゃなく、食文化ごと体験できるって感じですね!
メイさん: まさにそれです!「タイ料理って面白い!」って思ってもらえるのが、一番のやりがいですね。
タイ料理研究家としての挑戦―企業とのコラボで広がる可能性
ケージー: 料理教室以外にも、最近は企業とのお仕事も増えているそうですね?
メイさん: はい、企業の商品開発、メニュー開発、店舗のメニュー監修などのお仕事が増えてきました。例えば、タイカレーのレトルト商品の開発に携わったり、新しくオープンするお店のメニューを考えたり。
ケージー: 企業との仕事って、また違うやりがいがありそうですね。
メイさん: そうですね。料理教室では個人の方にタイ料理の魅力を伝えるのに対して、企業の仕事ではもっと多くの人に広めることができます。例えば、スーパーで並ぶ商品に関わると、それが全国の人に届くわけですから。
ケージー: たしかに!一つのメニューが商品化されると、一気に広がる可能性がありますね。
メイさん: そうなんです。でも、タイ料理ってどうしても「専門店で食べるもの」というイメージが強くて、まだまだ家庭で作る人が少ないんですよね。だから、企業と共にもっと身近な存在にしていきたいなと思っています。
ケージー: なるほど。例えば、どんな商品を作りたいとかありますか?
メイさん: 「日本の食卓に合うタイ料理」をもっと増やしたいですね。例えば、簡単に作れるタイ風のソースやスープの素とか、そういうものがあれば、もっと多くの人が気軽にタイ料理を楽しめると思うんです。
ケージー: それ、めっちゃいいですね!確かに、気軽に作れる商品があれば、ハードルが下がりますね。
メイさん: そうですね。今後も、企業と一緒に新しいタイ料理の商品を開発して、日本の家庭にもっと広めていきたいと思っています。
タイ現地ツアーで伝える、本物のタイ料理の魅力
ケージー: 料理教室や企業とのお仕事だけでなく、タイ現地ツアーもやられているんですよね?
メイさん: はい。「本物のタイ料理を知るためには、やっぱり現地で食べるのが一番!」と思っていて、定期的にタイに行くツアーを企画しています。
ケージー: どんなツアーなんですか?
メイさん: 朝から晩まで、ひたすら食べ歩くグルメツアーですね(笑)朝はカオトム(タイ風おかゆ)、昼は屋台のパッタイや市場でローカルのカレーやガパオ、夜はレストランや食堂でディナー…という感じで、一日中食べ続けます。
ケージー: めちゃくちゃ贅沢なツアーですね!
メイさん: そうなんです。でも、ただ食べるだけじゃなくて、「タイのどこで、どんな食材を使って、どんな風に作られているのか?」を知ることも大事なんですよね。だから、市場や食材店を巡ったり、現地の地域コミュニティや、シェフと交流する時間も設けています。
ケージー: なるほど。実際に現地の食材やシェフの話を聞くことで、より深くタイ料理を理解できるんですね。
メイさん: そうですね。例えば、日本ではあまり見かけないハーブや調味料を現地で試して、「こういう香りがあるんだ!」って気づくこともあります。ツアーを開催し、下見を重ねる、そういう経験を重ねることが、料理の経験値をぐっと上げてくれるんです。
ケージー: それは貴重な体験ですね!ツアーに参加した人たちの反応はどうですか?
メイさん: みなさん、「今まで知っていたタイ料理とは、全然違う!」って驚かれますね。そして、帰国後は「自分でも作ってみたい!」と料理教室に来てくれたり、タイ食材を探すようになったり。「タイ料理をもっと深く知りたい」というきっかけになっているみたいです。
ケージー: すごい!実際に体験することで、タイ料理の魅力がよりリアルに伝わるんですね。
メイさん: そうですね。食べることを通して、タイの文化や人々の暮らしにも興味を持ってもらえたら嬉しいですね。
YouTubeでタイ料理を世界へ発信—視聴者の9割はタイ人!?
ケージー: 料理教室や現地ツアーだけでなく、YouTubeでも発信されていますよね?
メイさん: はい!実はYouTubeも力を入れていて、タイ語でタイ料理を紹介するチャンネルを運営しているんです。
ケージー: タイ語で!?
メイさん: そうなんです(笑)視聴者の約95%がタイ人なんですよ。日本でタイ料理を教えている日本人って珍しいので、タイの方たちが興味を持ってくれているんだと思います。
ケージー: それはすごいですね!どんな内容の動画を配信しているんですか?

メイさん: タイのローカルエリアに行って現地の方から料理を学んだり、日本で撮影する時には日本で手に入る食材で作るタイ料理のレシピや、日本のタイ料理事情の紹介が多いですね。
ケージー: それはタイ人にとっても新鮮かもしれないですね!タイ人の視聴者の反応はどうですか?
メイさん: 「日本でこんなに本格的なタイ料理が作れるの!?」「この食材、日本にもあるんだ!」って驚かれることが多いですね。あと、「この日本人は本当にタイ料理を理解してる!」っていうコメントもあって、それはすごく嬉しいです。
ケージー: なるほど。タイの人たちにとって、日本の食材でどれだけタイ料理を再現できるかって、意外と知らない情報なんですね。
メイさん: そうですね。日本でのタイ料理事情を知ってもらうことで、タイと日本の食文化の架け橋になれたらいいなと思っています。

ケージー: 素敵ですね!それでは最後に、この記事を読んでいる皆さんにメッセージをお願いします!
メイさん: タイ料理には、まだまだ日本では知られていない魅力がたくさんあります。 料理教室やYouTubeを通じて、もっと多くの人にその魅力を伝えていきたいと思っています。
もし「もっとタイ料理を知りたい!」と思ったら、ぜひYouTubeもチェックしてみてください。一緒に楽しく学んで、タイ料理をもっと身近に感じてもらえたら嬉しいです!
ケージー: ありがとうございました!これからの活躍も楽しみにしています!
メイさん: こちらこそ、ありがとうございました!